《MUMEI》
「気をつけて帰りなさいね」
はじめに声をかけられた時と同じように、どんな騒音も掻き消し私の耳にはっきり聞こえた。
いや、その声によって音も時間もない世界に飛ばされたんだ………
……そう思った。
私は思わず立ち止まってしまった。
私はこの女の人を見た時魔女みたいだと思った。
だか魔女が渡すものとは不釣り合いな5万円を今持っている。
−−それは童話に戦車が出てくるような違和感。
−−この時になってやっと気付いた。
私の後ろにいるこの人は魔女なんかよりよっぽど恐ろしい人なんだ。
私は変なものを売り付けられるのをうまくかわしたつもりでいた。
でもそれは相手の思う壷だったのではないか?
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