《MUMEI》
記憶喪失
頭を強打して数時間、当然今日のリハビリは中止、それどころか生存が危うい状態でこのまま昏睡状態に陥るか助かっても記憶喪失になっているのだそう奇跡が起こらない限り元の状態には戻れないらしい。
「来年、大変じゃない…」
「ええ…」
「それにしてもあのジジイ凶暴だわ…」
「幸いよくても記憶喪失なんだから…深刻なんでしょうね…」
「難病だとは思えない元気さだったのに…」
看護婦の会話が耳に染みる
(仕方ないよ…ね)
記憶喪失になれば、勉強はおろか、なにもかも変わってしまいそう、ただでさえあの子は私以外信頼出来る人がいない家庭も両親が蒸発したし、どうやらこの病気がきっかけで祖父母、親戚とも疎遠らしい。学校でも私以外の人と表だけの関係だった。
「生きてるかな…」
生存自体危ういのになすると
「牧原さん、のご友人ですか…」
突然、脳神経外科の主治医が来た。
「後頭部を強く消火器で打撃し、手術を施し、昏睡状態まではいかなかったのですが
前話た通り記憶喪失です。今はまだ麻酔で眠っていますが、」
「え…あ、でも言い方が悪いのですが植物人間というか、植物状態にならなくてよかったです
もとから意識というか出血多量でしたしもう死ぬのかなとさえおもっていました。記憶喪失でもいいんです。生きていてよかったと心から思います…さようなら」
「あ…」
もう近づいてはいけない明日から病室に行けない。あの元気な姿が見れない。
「わかってる、また会える日まで…」

あれから、ずっと私たちは距離を置いていた。
新学期になって病気が回復しても話さなかった
表だけで付き合っていた子たちも離れて一人になっていた。
「私が踏み入れる事が出来ない領域だもんね」
受験勉強に熱中して。念願の第一志望、生田高校に入学、春から頑張らなくちゃ。そう風の噂によると静も記憶喪失ながら塾に通い第一志望に合格したらしい。
アノトキ 終

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