《MUMEI》
渇望
「いつまで寝てんのよ! いい加減起きろっ!」

――激しくドアを叩く音とキャルの怒声が響く。

……もう朝かよ。

口の中、キモチわる……っ。

そういや昨日食べたアト、歯磨きしてなかったからな。歯ブラシなんか持ってきてないし。

硬いベッドから起き上がると全身が痛い。

どうやら昨日の移動で筋肉痛になったようだ。普段あんなに動くことないからな……、完全に運動不足だ。

「今いくよ〜」

フラつきながらドアを開けると、彼女がスゴイ形相でこっちを睨《にら》んでいる。

「おはよう。歯磨きしたいんだけど……歯ブラシ、あるかなぁ」

「あると思ってんの?」

更に険しくなる彼女の表情を見て、

「ないよな。悪い」

すると彼女は何かを差し出してきた。

よく見ると衣服(?)と手のひらサイズのパッケージだ。

「これは……?」

「見てわかんないの? アンタの着替えと『歯みがきシート』よ。靴もあるわ」

「くれんのか? オレに」

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