《MUMEI》
拒否
「え・・・」
「いい?」
「でも・・・」
「大丈夫!お金は、こっちから出すよ」
(問題は、そっちじゃねぇ・・・)
 靖は、沙紀を見た。
「・・・・」
 沙紀の手が少々震えている。
(沙紀・・・怖いよな。最近になってやっと話せる奴が出来たのに、そいつらと離されてな・・・)
「校長」
「?」
「移動は、拒否させて頂きます」
『!?』
「俺もですけど、沙紀はやっと仲良く話せる奴も出て来たので・・・引き剥がすのは、どうかと・・・」
「靖君・・・」
「あと・・・好きな奴もいるので・・・」
 靖が、頬を赤くした。
「そうか・・・でも、あちらの校長はどうしても。と」
「嫌です」
 キッパリと断った。
「靖君・・・」
 靖は、立ち上がった。
「それでは・・・」
「え?」
「沙紀、行こう」
 靖は、沙紀の手を引いた。
「うん」
「失礼しました」
「ちょっ・・・」
 二人は、さっさと出て行ってしまった。正臣は、背凭れによしかかった。
「くっ・・・はははは!」
 正臣は、頭を抱えて笑いだした。
「正臣・・・」
 遼平が、隣から顔を出した。
「面白いなぁ・・・本当に」
「?」
 正臣が、携帯を取り出した。
「もしもし?喜田です」
(ああ、あっちの校長か・・・)
「すいません。拒否されてしまいました・・・」
 言っている言葉の声と表情が全く違った。声は、悲しんでいるのに顔は・・・
(満面の笑みだぁぁぁぁ!)
「どっちかって?近藤 靖です。・・・え?本当ですか?マジで言ってんですか?」
 正臣の顔が焦り始めた。
「わ、分かりました・・・それでは」
 電話を切って、正臣は唖然とした顔だった。
「ど、どうしたんですか!?」
「明日、あの人が近藤君に逢いに来るって・・・」
「はぁ?」
「強引に連れて行くのかな・・・」
 校長室が、シン・・・とした。

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