《MUMEI》

「俺がこの写真を渡すのは木下に謝りたいからだ。

初めてカメラを持って内館を写したとき、泣き叫んで許しを乞うあいつに夢中でシャッターを切った。
そこに存在した空間全てを収めて自分の物にしたかったんだ。」
何を言い出すんだ南……。あんたはいい子だろ!

「それは一体どういう意味で受け取ればいいんだ?」


「好意ではないけれど執着……かな。
内館は刃向かわずに写真を撮り続けた俺に姉への反逆心を目覚めさせたくてちまちまちょっかいかけてきたようだけれど、実際楽しかったし。あの頃、内館を写していなければカメラの楽しさに気付けなかったと思う。

けど、内館も成長して俺も風景を撮って入賞した。
もう虐げられている内館を撮りたいとは思わなくなった。
木下が俺の写真褒めてくれて凄い罪悪感が生まれて、この写真を大切にしている自分が恥ずかしくなって、やっと踏ん切りついたんだと思う。」
南は遠く天井を見上げている。抜け殻みたいだ。こんな変態写真でも彼には思いれ深いようだ。


「これはどうすればいいんだ?」
渡されても困る。


「好きにしなよ。木下なら最良の選択をするだろうから。」

その言い方プレッシャーなんですけど。


「……頂きます。」

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