《MUMEI》

その時・・・・
カツン、と
アパートの一階の、鉄筋の階段が鳴る音がした。
それは須佐男の現在いる夢の世界に容赦無く侵入して来る、現実世界からの訪問者・・・・。
カツン、カツン、
足音はゆっくり階段を上がって来る。


画面の中では壊神Zが襲い来る敵を次々に段平で切り伏せている。


須佐男の眼はZの活躍を映していたが、
知覚の80パーセントは
聴覚に集中していた。
そして思う。
足音は二階の一番奥にある、この部屋の前までは来ないだろう、と。




カツン、カツン、
足音は階段を上がりきって二階の廊下をゆっくりとこちらへ近ずいて来る。




須佐男はいつもこんな時に、こう考える。
足音は隣の部屋の前で
立ち止まるはずだ、と。




だが
ドーン!ドーン!
ドアを殴りつけるような音がして、鍵がガチャガチャ鳴ると、
あの男、遠藤優太が荒々しくドアを開けて入って来る。

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