《MUMEI》 「じろー!先生が呼んでる」 七生が探しに来た。見つける勘は昔から鋭い。 内ポケットに写真をしまい込む。腕を取ってずるずる教室に引きずられた。 「先生がなんだって?」 また、始まった。 「え……と、」 続きが出てこない。焦ってる。 「いいけどね。」 前よりは控めになったから良しとしよう。 「怒らないの?」 様子を伺っている。 「我慢してやってる。」 大人ですから。フンと鼻を鳴らした。 「……俺、二郎が友達で良かった。」 目を細める微笑は七生の作りの良い顔立ちによく映えた。いつもそうやってお上品に笑えばいいのに。 前へ |次へ |
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