《MUMEI》
不協和音。
僕達は螺都井村で泊まれる場所を探した。
感じる視線は、明らかに殺意がこもっていた。
どうやらこの村は外から来た人間を嫌うらしい。
…いや、それとも“僕達”が嫌いなのか。
どうでもいいや。
にしても部外者が嫌いだとしたら、宿なんて無いんじゃないか?
つまるところ野宿…
いや、仮に宿があったとして…果たして泊まらせてくれるのかどうかが怪しい。
考え込んでいると千里が
「しかし視線がうぜぇ…」
と呟いているのが聞こえた。
確かにここまで部外者を嫌悪する理由が解らないな。
そこまでして殺意をむき出しにする意図が理解できない。
関りたくないなら無視すればいいだけだろうから。
村人達は僕達を警戒しすぎている…?
そこまでして知られたくない事があるのか?

…考えるの面倒だから止めとこう。

「おーい!そこのお二方ー」

おにいさんが誰かを呼んでるなぁ
二人組みかー
僕達みたいな感じかなー
………………………
「ねぇ、あの人が呼んでるの僕達かな」
「…さぁな」

「そこの悪目立ちしちょるお二人だよー」

…僕達を呼んでるんですか
というか悪目立ちって…
「…なんでしょう?」
とりあえず営業スマイルで受け答え。
「この村には宿なんてないよ。」
「……やっぱか」
あ、千里が溜息吐いた。
「いつまで滞在してるのかは解らないけど今日は私の家に泊まっていったらどうです?」
あ、優しい人発見。
「…どうする?」
「せっかくの厚意だ、受け取ろう。」
ま、それが常識だよね。
千里も常識が通じる数少ない特殊案件課の人間。
と言う訳で。
おにいさん…蒔田浩太≪まきたこうた≫さんの家に泊まる事にした。
そこら辺にいそうな優しいおにいさんだ。
いや、別に失礼な意味ではなく。
「いやぁ、しかしお二人さん。なんでこの村に来たんだい?この村には何もないし、部外者は嫌われるからめったに人は来ないんだよ」
「でも貴方は僕達を嫌悪していないですよね?」
「あぁそれは…」
そこまで言って蒔田さんは寂しそうな顔をした。
あ、これなんかあったフラグ立った。
「…やっぱりこれは君達に話すことじゃないね」
と、苦笑する蒔田さん。
「出来れば、話してくれないか?俺達は知りたいんだ。」
ちょ…何を知りたいのか明確じゃないんだけど。
まぁ、あながち嘘では無いけど。
『この村はどうして部外者を嫌うのか。そして、何を隠しているのか。』
僕達はそれが知りたい。
最初に謝っておきます
蒔田さん、すみません
僕達は貴方を利用します。

そして、裏切ります。

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