《MUMEI》
POLA
つめたい。
何もかも冷え切っている。


すごい風だ。
何も聞こえない。


目に吹雪が入る。
急いでいてもゴーグルはしてくるんだった。
油断すると瞳が凍りそうだ。


何時間歩いてきたのだ。
白夜のせいで時間がわからない。


白い。


どこから歩いてきたのかもあまり覚えていない。


ただ
逃げてきたこと、今のところ逃げ切れていることだけはわかる。


この逃避行と命と終わるのはどっちが先かと考えてみる。


息はあがっている。
口元は深いえりの中にあるが
それでも空気は鋭く胸を刺す。

爪先の感覚はすでにない。
指先を失うことになるだろうか。


覚えている限りずっと一点を目指している。


星。


ぼんやりした点のような星が一つだけ空にでているのだ。


そして太陽とは無関係に
星と対称位置へ長く長く影が延びている。


まるで地平線まで届くかのように
奇妙に背後へ延びている。


眠い。
だがだめだ。
歩かなければ死ぬ。

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