《MUMEI》 小澤の返り血を浴びながら歪んだ笑みを浮かべる相手 行き成りのソレに、そこに集まってきた全員がざわつく事を始める 「早速始めた様ね。まぁ、いいわ」 その騒ぎの中、音もなく現れたのはあの少女 室内を見回し、そして取り敢えず皆に座る様促す 「……あなたもよ。由江 奈々」 未だ小澤へと銃口を突き付ける相手へ 少女は一瞥をくれてやり、同じ様に座れとソファを指差した 「……っ!」 由江は不満気な顔をして見せたが、近くあったソレに腰を降ろす ソレを確認すると、少女は背後へと目配せし 「……紅、まずは小澤 子規の手当を。話は、それから」 「畏まりました」 少女の後ろに控えていたらしい執事らしき男・紅は深く頭を下げると身を翻し そしてすぐに手当てに必要なモノを持って戻ってくる 「小澤様。失礼致します」 血に塗れた小澤の衣服を剥ぐ様に脱がし 消毒液に浸されたガーゼが押しあてられた 手際よく手当が成され、漸く一息つくと、少女が話す事を始める 「……説明は此処に来る前にしたと思うけれど。これからは誰を殺しに掛っても構わないから」 突然すぎるその宣言にまたざわめきが起こり 一体どういう事かを皆が少女に迫り寄る 少女は答える事をしないまま、僅かに視線を小澤達の方へ だが小澤は眼を合わせる事はせず、ソファに深く身を寛げるばかりだ 「いつ、誰に仕掛けるも自由。どんなてを使うのも自由。皆、好きにやりなさい」 これでいいのだろう、と言わんばかりの少女 伝えるべきを全て伝えたのか 紅を引き連れ部屋を出て行った 後に残された六人 皆様子を窺うように視線を泳がしている 「……そういう事」 沈黙を破ったのは由江 奈々と呼ばれたあの女 立ち上がると小澤を見下しながら 「……あんた達だけを、楽になんてさせないから」 それだけを呟き、その場を後に ソレをきっかけに一人、また一人と続き 残ったのは小澤達のみ ソファに身を寛げたままの小澤へ 「戻らないの?」 傍らからの声 若干の上目遣いで見上げてくるその眼は、小澤に子供のソレを思い出させ 無意識に、相手の首へと小澤の手が伸びる 「……まだ、駄目だよ」 穏やか過ぎる笑みを浮かべながら、やんわりとその手を退けようとした その手を逆に掴み上げると、小澤はその身体を引きよせ、抱き締めた 「……高宮、しずる」 呼ぶ事さえ嫌悪していた相手の名前を呼んでやり 抱いたこの腕はな荷を求めるのか ソレすら分からず苛立ちを覚えてしまう 「俺の名前、覚えてたんだな。全然呼んでくれないから忘れてるのかと思った」 忘れられればどれほど楽だったか ソレが出来ないが故に、田部は今此処に居る 「眼、真っ赤だな」 不意に頬へと伸びてきた手 まるで愛おしいモノにでも触るかの様なソレを小澤は打って払い 「……処でお前、さっきの女、知ってんのか?」 話しをすり替える 相手、高宮 しずるはどうかしたのか肩を竦めながら 「……あれ、俺の姉だから」 聞かされたそれに、自分から問うたいんも関わらず 田部は興味なさげな表情を浮かべて見せ 「……寝る」 短く一言で小澤は立ち上がる 未だざわつくばかりの他の面々を放り置き部屋へと戻った 「……処で、アンタ奈々になにしたんだよ?」 「は?」 ベットに身を寛げるなり、問う事をされ 仰向けになっていた小澤へと覆い被さるように高宮が乗り上げてくる 顔が間近で、まるで強請る様な様な仕草小澤は肩を揺らす 「……俺も、お前とさして変わんねぇか」 「何の事だよ?」 小首をかしげてくる高宮へ 小澤は更に口元へと嘲笑を含ませた笑みを浮かべながら 高宮の後頭部に手を添え、自身の胸元へと引き寄せた 寝る、と宣言したその言葉通り、それ以上ないをする事もなく 田部は寝の体制に入る 「……無防備なんだよ。アンタ」 高宮を腕に抱いたまま寝入る小澤 何の警戒もなく眠るその姿は余りに無防備過ぎて その晒された喉元へと高宮は手を伸ばし だが絞めようとする意志はなく、唯触れるばかりだった…… 前へ |次へ |
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