《MUMEI》
1.ある実験の記録
殺風景な薄暗いコンクリートの部屋で、数十名の異様なスーツ姿の人物達が一方の方向に向かって折りたたみ椅子に座っていた。
異様と言うのは、彼らが全て顔がわからないように仮面を付けていたからだ。
彼らの向く方向に、簡略な人体図の絵を映した
液晶プロジェクターが、暗い部屋の中で光を放っている。
プロジェクターの脇で
部屋の中では唯一顔を晒(さら)している白衣の初老の男が佇んでいる。
「今日は皆様方よくぞお集まりいただきました。新世紀における病の治療方法とは何か?
それは人間による外部からの外科手術では無く、人体内部へ送り込まれる
ミクロサイズの医師、
すなわちナノマシーンによって行われます。
ご存知の通り、GODグループ傘下である
我が地母製薬の医療機器開発部門において、
ナノ・マシーン開発は長年の念願とされていました。
この体内に注入する事によって細胞レベルでの
肉体の修復に活動する、
究極の医療マシーンの
完成が意味するものは、
人類にはかり知れない恩恵をもたらすでしょう。
まず癌(ガン)やウィルスなどの恐怖からの開放。体内にナノ・マシーンという、休む事を知らぬ医師が24時間勤務する事により、人類の平均寿命は少なくとも現在の二三倍は長くなるものと思われます。あるいは、それ以上かも・・・・」

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