《MUMEI》

「ご覧下さい・・・・」
白衣の男が手にした棒で人体図の絵を指し示す。
それは病原菌を表しているのだろうか?
いささか単純とも見える、周囲を刺(とげ)で覆われた球形の黒い小物体が、見る間もなく人体内で無数に増殖していく
アニメーションが、画面に映し出される。
「これを病に犯された人体だと思って下さい」
「ふん」
絵のセンスゼロの映像に、見学者のひとりが
小ばかにしたように鼻を鳴らした。
それに対し白衣の男は意に介した様子も無く、
「ここに細菌や細胞よりひと回り小さい10nm〜
100nmサイズのナノ医療マシーンを投与します」
注射器を表した絵が人体の腕の部分に突き刺さると、見る間に黒い病原菌が破壊されて消えていく。
「このナノ・マシーン・・・・ミクロの医師団達は人体内で細胞の異常な活動を探知すると、すぐにその場所に駆け付けます。
そこで分子レベルでの
手術を行い、細胞の活動を正常な状態へと戻します。
彼らは言わば、人体内の有能な外科医なのです」
「今さら、そのような
説明聞かないでも分かっておるわ」
仮面の客の一人が苛立ったようにつぶやく。
「理論はいいから、実際の実験においてナノ・マシーンの実用性は証明されたのかね?」

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