《MUMEI》

被験者の男が急にガタガタと震えだしたかと見るや、いきなり椅子の上で全身を海老反(えびぞ)りに反り返らせた。
今にも拘束具をひきちぎりそうな勢いだ。
「ぐわががーーーっ!!」
男は凄まじい勢いで暴れ狂っている。
「舌を噛むぞ!誰か口に噛ますものを持って来い!!それから鎮静剤を!!」柴進一郎の叫びに応じて周りから助手らしき者達が数名走り寄っていく。



ここで画面が切り替わった。柴進一郎が二枚のレントゲン写真を前にして、助手達に囲まれ話している。先程とは違う部屋のようだ。
「こちらのレントゲン写真が三日前・・・・、つまりナノ・マシーン投与以前の被験者の写真だ。このように癌細胞の影がはっきりと映っている」
手にした棒でその部分に円を描いて見せる。
「そしてこれが昨日の写真・・・・」
棒が今しめしたのと同じ場所を指し示した。
「ご覧のように綺麗さっぱりと消えてしまっている」
「おお!」助手達が賛嘆の声を上げている。



また画面が切り替わり、
柴進一郎のアップになった顔の後ろにはどこかのスポーツジムのような
運動器具が並ぶ部屋が映し出されていた。
柴進一郎は興奮したように眼を輝かせている。
「被験者へのナノマシーン投与から五日が経過した。」

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