《MUMEI》

「ナノ・マシーンは被験者の体内で、末期の癌細胞に犯された異常細胞を分子レベルで修理し、正常な細胞へと戻した。ここまでは計算通りだ。
だがそれだけでは無い!
見たまえ!!」
進一郎が背後に向かって顎をしゃくると、カメラがスポーツ・ジムを思わせる部屋の中を奥へ向かって移動していく。
カメラの行く手にルーム・ランナーの上で走っている被験者が映し出された。かなりのスピードを出している。
最初の映像では死相さえ感じさせた顔色だったのに別人にしか見えないくらい今は顔色が良く、むしろ力が漲(みなぎ)っているように見える。
「調子はどうかね?」
「絶好調だよ、博士!!」男は走りながら爽やかとさえ言える笑顔をカメラへ向け、親指を立てて
見せる。男はルーム・ランナーから飛び降りると、近くの鉄棒へ飛びつき懸垂を初めた。
そのまま腕を伸ばし大車輪。
「病気の治療だけでは無い!ナノマシーンは人間の潜在能力を引き出すようだ!!」
進一郎が興奮して叫んでいる。



画面に見入っていた仮面の男達の何人かが椅子の上に身をのり出した。中の一人がつぶやいた。
「素晴らしい・・・・」



画面では被験者が百キロのバーベルを軽々と持ち上げている。
だかここでプロジェクターの横に立つ白衣の男が沈痛な面持ちで喋り始めた。
「実験経過は予想外に良好でした。しかし、思いもよらぬ事態へと発展していったのです」

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