《MUMEI》

次に画面に映されたものを見て、客達の間に妙な沈黙が落ちた。
ヒソヒソと喋りながらお互いの顔を見交わすものもいる。
薄暗い部屋のベットの上で裸の男女が重なり合っている、それはまさしくSEXを映したシーン以外の何物でも無い。
天井からのアングルなのか、男が筋肉質な背中をこちらに向け腰を動かしている。男の下で押しひしがれるように白い女体が見え、女の両腕とふとももは男の体にしっかりと回されていた。
男が動く度に、その肩ごしに大きく口を開け、眉を寄せて喘ぐ女の顔が見える。意外に美形だ。
「はぁ?何故ポルノだ?」仮面の一人が言った。
「体力の異常な増強が
被験者の性的な欲求も
活性化させてしまってね。彼女はまだ研修中の
大学生だが、喜んでこの歴史的実験に参加してくれたよ。非常に勇気ある女性だ」
白衣の男は白髪交じりの右眉を上げて淡々と答えた。
被験者は女を俯せにすると、今度は後ろから突き始めた。やがて男が大きくのけ反り、女が口をOの字に開けて白い裸身を痙攣させる。
燃えつきたように二人はベットの上へ崩折れ、荒い息をついている。
「いつまでこのエロ画像を見せるつもりだ!!」
「お嫌いでしたかな?」
相変わらず意に介した
様子も見せず、白衣の男は早送りで画面を進める。SEXは一度では済まなかったようだ。しばらく上に なり下になり様々な体位で交じり合う男女の画像がスピード再生で続いた後、唐突に画面が切り替わった。
「問題の事件です」
白衣の男がおごそかに告げた。

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