《MUMEI》 細長いつつみ「あっ」と言う低い声を聞いたのは 芹奈が廊下を歩いている時だった。芹奈は振り返り、びっくりした。 「ちょうどよかった」 と、廊下の向こうから近づいてくるのは侑だった。 自分の後ろを確認してみるが、誰もいない。 わ、私に話しかけてる!? 「今六組に行くとこだったんだ」 自分に話しかけていることを知って あわてていた芹奈は、目を丸くした。 『何年何組?』―――二日前、電車で訊ねられたことを思い出す。 「私に何か用事?」「これ……」 と言いながら侑はずぼんのポッケトに手を入れた。 「同じようなのが、なかったんだけど…」 差し出されたのは、小さな細長いつつみだった… 前へ |次へ |
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