《MUMEI》

それでも足は動いた。
星をにらんで歩く歩く歩く歩く…


風の轟音。


長引く影。


扉にたどり着かなければ。


扉。


ふと思う。
扉に達する道は星と同じ方角か…?


立ち止まる。
辺りを見回す。


本当に星をさしていいのか…?


右手の遠くで
低い雲が手招く形をしているように見える。


左から吹きつけた吹雪の轟音に
何かの呼び声が聞こえる気がする。


星に目を戻すが、
一度目を離してしまったために
もともとどこに星があったのかをすでに見失っていた。


緊張と焦りで不気味に体が熱くなった。
寒さ以外の理由で手足が震える。


ふりむくが影はない。

見回すが星はない。
頭は働かない。

体も動かない。



感情だけがせわしくせわしく暴れていた。


とにかく立ち尽くしては無駄に消耗する。

ふと背後で何かが動く気配がした。

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