《MUMEI》 霊奈は書き終えたマークシートを手に、発券機があるコーナーへ走っていった。 呪理奈はタバコを蒸かしながら霊奈を見送っていたが、その表情はどこか苛立ちを隠しきれずにいた。 呪理奈は苛立ちを紛らわすように、競馬新聞『勝馬』を広げると、中京競馬場第8レース・ダート1600メートル・3歳牝馬特別の出走表を眺めた。 フルゲート埋まったレース前のパドックでは、うら若き乙女(牝馬)たちが勝利を賭けて息巻くように歩いていた。 その牝馬たちは、若々しく美しい馬体とは裏腹に、若さ故の危うさを秘めていた。 当然その危うさは馬券を買う立場の人間に対し、リスクという名の影をもたらす…。 呪「こんなレース、金をドブに捨てるようなもんだぎゃ…。」 呪理名はタバコを揉み消すと、次の第9レースの出走表に目を移していた――…。 前へ |次へ |
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