《MUMEI》
初夏
初夏の青空の下、高校の通学路は生徒であふれ返り

あちこちから挨拶の声が響く。

ずぼんのポケットに手を入れて歩いていた侑はふと

自分のほんの数歩手前を歩く女子高生に気がついた。

小柄で、髪を短めに切った女子高生。

高校指定の通学鞄を肩からさげて

人混みをてくてく歩いている。

可採芹奈、という名前はすぐに出てきた。

でも別に声をかけるほどの間柄ではないので

そのまま彼女の後ろを歩く。

ふいに、前を歩く芹奈がごそごそと鞄をさぐった。

取り出したのは桜色の携帯電話で

そこにきらりとゆれるストラップに、侑は目をとめた…

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