《MUMEI》
私は二人に今日あった事を話した。
「それでさっきお金を持って、ぼうっとしてたんだね。早紀ちゃんはその女の人が実は詐欺師だと思ってて、狙われているかも、ってことだよね」
ちゃんと伝わったかどうか心配したが佳代が上手くまとめてくれて助かった。
「うん。何か危害を加えて、幸せを買うようにしてくるんじゃないかと思ってる」
−−直感で逃げて帰ったのは正しかったと今更感じた。
「あたしもそう思うな。本当にその女が魔女で、早紀の幸せとお金を交換したって考えるのは、どう考えたって無理があるよ」
まず佳代も靖子も私と同じような考えに至ってくれた事に安心感を覚える。
「早紀ちゃんは、暫く一人で外を出歩いたりしないほうがいいね。勿論これは念のためだよ。何も起きない可能性だってあるんだから」
「警察とかに相談するのはどう?あたし達だってずっと早紀の傍にいることは出来ないんだし」
「警察は……まだ何かあったわけじゃないし………もうちょっと様子を見てからでいいと思う……けど」
「何かあってからじゃ遅いよ」
ぴしゃりと靖子に言われた。その言い方は怒ってるようだった。
「あっほら、私達女の子3人だといざという時頼りないでしょ」
靖子はなんとか取り繕おうとしていつもの笑顔をするが、佳代も私も靖子が神経質になる理由を知っているから………沈黙してしまった。
気まずい時間が少し流れたが佳代がその沈黙を破ってくれた。
「今日の段階じゃまだ何とも言えないよ。寧ろ5万円取ってる早紀ちゃんの方が詐欺っぽいよ」
私達は笑いあい、また明日この話をしようと言って部屋に戻った。
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