《MUMEI》

 人と交わる事は 何一つ 行われずにきた。死んだ人間が すればいい事だけ 何も感じない顔で 何の有益も ありえない顔で 受けてきた。生きる事は 自らを殺す行為だった。死んでいる人間は 殺されるという 危害を受する必然を 拒否する。
嫌な事だけ したくない事だけしか しないという鉄則だけが 自身を死んだまま 生かしてこさせる事の できた方法だった。
 今の彼女は 強制を解かれればただちに たとえ思考などしなくても 彼女そのものである時間を 飢えたほどに必須とする。そうでなければ 窒息し続けているみたいに。人として 望むべき安全な時間でさえ 息を吸っていない 止まってしまうような 時間になる。
 死んでいてもいい。彼女はもう 彼女以外では ありたくない。一人でなければ 彼女は本当の彼女を為さない。
 大切な事のために 息をしていない時間が積もっていくと 本当に呼吸を止めているかのよう。
 もうきっと 人間の呼吸は しなくなるのかもしれない。2206

 一生 死んだ後も 侮辱し続ける。お願いだから 侮辱しないで。お願い やめて。お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い お願い 彼女は死んで 侮辱も受ける。これ以上 侮辱しないで。そんな権利はない。どこにも 逃げ場がない。侮辱された後 死んでいる場所がない。もう誰も 侮辱してはいけない。彼女が 生きたまま受けてきて それにまだ 塗り重ね続けられる。彼女は 死んで受けていくのに それ以上 侮辱し続けないで。お願い 侮辱しないで。お願い 彼女を超えて 侮辱しないで。お願い どうか これ以上 侮辱しないで。もう これ以上 侮辱しないで。死んできた 殺すことも もうできたでしょう? これ以上 何が欲しい? 侮辱以上の 命以上の 死以上の 何が足りない? 彼女を 侮辱で 塗り消したら その先を 踏むことはできない。お願いだから 侮辱しないで。もう 侮辱しないで。お願い やめて 侮辱しないで。お願い 侮辱しないで。どうか お願い お願い やめて。侮辱しないで。死んできたの 死んで 侮辱されているの お願いだから それ以上 お願いだから 汚さないで。お願い お願い お願い お願い お願い お願い どうか お願い お願い 侮辱しないで。どうか どうか どうか どうか 侮辱しないで。お願い お願い お願い

 いつも直結を免れなく押し付けられる推因は それこそが更に覆い被せるように 彼女をどうしようもなく侮蔑してしまう事になるから どうかやめてと震えるほどにいつも願う。それは別の力によって形を変えさせられてしまった物。それは威力に変えさせられてしまうもの。
たとえ武器を手にしていなくても たとえ派兵などしていなくても 平和をうたいながら人殺しに加担している時もある。
彼女が助からなかったのは人間のフレームが壊されたから。彼女は最初の一瞬でそれを知った。だから生きる可能性を失った事を知ったのだ。彼女の中身は囲いがなくて野ざらしのまま 人間の形に押し込んでおける枠組みの壊れたままで存在している。中身はまともな感覚を持つのに血管も水分も組織も剥き出しだから どんなに詰め直し続けてもこぼれ落ちる状態のままで機能しない。そんな姿でこの世にまだ存在したままでいるのが彼女という人型の静物。
枠がなくて立ってもいる。おしまいを探してまだ今日に居させられてもいる。侮辱以上の何をされてもピクリとも動かずにもいられる。最後の一瞬だけ人に戻って死ぬ事の為だけに 彼女は 彼だけは決して絶対に 彼女を侮辱などしないでいてくれる人なのだと 本気で信じる事にして死んでいくつもりを決めている。
馬鹿らしくても ほかに何も持っていない 保証もないのに 死ぬ為に必要になるもの それ以外何にもない。生きる為に 生きた事などなかった。生きる為のよりどころにした事もなかった。死ぬためにだけ それが必要。2129

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