《MUMEI》
隆志視点
裕斗は俺をじっと正面から見据えてきた。





不思議な色の眼が僅かに揺れている。







――俺の手の中の暖かさ。







握りしめる中に、この切ない想いを、
ひたすらひたすら、




流し込む…。





――初めて会った時、なんて不器用な奴なんだと思った。





何かにつけ誰かれ構わず気を使う。



おかげで緊張が抜けず言われた事が上手く出来ない。




――つい、見ていられなくて声をかけた。




何時もじゃこんなタイプ、ほっとくのに何故か気になった。






――仲良くなったらめちゃめちゃ可愛い笑顔を見せた。





良く見るとめちゃめちゃ綺麗で…。





でもふと時々寂しそうにする。




――その理由が知りたくて、





気がつくと俺は彼を
いつも追っていた。






そして理由を知ってしまった。







そして気付いてしまった……。








――俺は裕斗が好きだって事に……。





「葵は…」




裕斗は視線を反らす事なく、そのまま聞いてきた。






裕斗は大切な話の時だけは必ず相手を見て話す。





真面目で繊細な子…。





大切に…してみたい…。






「別れた…、ケジメはつけたよ」






葵も大切な子だった。





だけど俺は裕斗に対する感情に気づいてしまった。







葵には本当にすまないと思っている。





だけど、もう気持ちに嘘はつけなくなってしまった。







「裕斗…、ベロベロになってたから覚えてないかもしんねーけど
お前さ、今の恋人に恋愛感情が無くて辛いって、…そいつに申し訳ないってマジ辛そうに言ってた…。



だから決めたんだ、




裕斗が俺に惚れる様に…させようって……」








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