《MUMEI》

「おはようございます……ロッドさん」

ブスッとした声音《こわね》になってしまったが、今回は仕方ない。

ん……? ロッドさんの背後に違和感がある。

その背後からニュルリと細い腕が伸びてきたと思った瞬間――

「ヒャオォォ――ッ!」

「え?」

何が起こったのかまるでわからなかった。ただ、両肩に触られたという感覚……それと奇声だけが耳に残っている。

「あの……なんですか? 今の」

ワケがわからず彼に尋《たず》ねると、靄《もや》がかかった手でオレの後ろにある何かを掴《つか》む。

「こら。そういうことをしてはいけない」

「アッハハハッ! ゴメンゴメン」

――慌てて後ろを向く。

「おっはよ〜。ケータちん♪」

お手上げポーズの女の子がロッドさんに頭を掴まれながら出てきた。……コイツか。

「おう、おはよう。キアンちゃん」

いつもこんな感じで元気なのか? 天真爛漫《てんしんらんまん》って言葉はキアンちゃんのためにあるようなモンだな。

ロッドさんはロッドさんで我が子のイタズラを叱《しか》る父親っぽいことしてますけどね、アナタも大概ですよ?

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