《MUMEI》

 「いっただきまーす!」
そして夕食時
宣言した通りに夕食を食べにきた美保
井上手製の寿司を目の前に、子供の様にはしゃぎ手を合わせ食べ始める
その旺盛な食欲に圧倒される二人
つい食べずにいると
「二人共、食べないの?」
小首をかしげてくる美保
その間にも食べる手は止めず、皿からは次々と料理が消えて行った
結局、井上達はさして料理を食べる事はなく、夕飯を終える羽目に
「ごちそうさまでした〜。美味しかった〜」
すっかりご満悦な美保
そのままソファへと身を寛げようとする美保へ
「満足したか?ならさっさと帰れ」
「あー、お兄ちゃんってば酷い〜!」
「うるせぇよ。飯食わしてやっただけでも有り難いと思え」
さっさと帰れ、と手を振ってやれば、美保はつまらなさそうな顔をしてみせ
だがすぐに何かに思い至ったのか、口元に笑みを浮かべて見せる
「そんなに井上さんと二人きりになりたいんだ〜。だったら私ってば邪魔だもんね〜」
「……お前、何が言いたい?」
「別に何も。じゃ、私は帰るから。ゆっくり二人でイチャイチャしちゃってね」
「はぁ!?」
「じゃ、バイバイ」
言いたいことを言い放ち、美保はその場を後に
その背を見送ると、井上達は互いに顔を見合わせ小首をかしげてしまったのだった……

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