《MUMEI》
出来ない事もあります…
.




『俺、ケンちゃんの事振り向かせる自信あるぜ?』



ユキにそう言われた時は正直焦った。


けど、実際何て事ない。


そりゃ、『手ぇ繋いで』ってねだられる時もあるけどさ、人気が無かったら別にいいかって思って繋ぐ。


『抱きしめていい?』って聞かれて、人気なかったら許可した。



だって、別に嫌いな奴じゃなし。
ユキとは長い付き合いだし…

それに、こんな要求くらい軽く受け取らないと、俺が変に意識してしまいそうで、それが怖かった。




………怖かった?





あれ…?



何で俺ビビってんの?




「……ちゃん」



コレってさ、



「…ンちゃん?」




ユキの罠にはまってる?





「ケンちゃん!」

「うぉ!!な、何だよ?」

そうだ、隣にコイツいたんだわ…



名前を呼ばれ、思考が現実に戻った俺。
気付けば、いつの間にかユキの家の前まで来ていた。


「あ!もう着いてんじゃん。じゃあな、また明日。」


俺はそう言いながら、繋いでいた手を離そうとした。
でもユキは中々離してくれなくて


「離してくれないと、俺帰らんねぇんだけど?」


って言って、離してくれる様頼んだら


「チュウしてくれたら離してやるぜ?」


って、まるで悪戯っ子みたいな笑顔で俺の顔を覗き込んできた。

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