《MUMEI》

一時はどうなることかと心配したが――

「ちょっとアンタ。いつまで抱きついてんのよ」

「え……? おわっ!」

慌てて身体を放す。

彼女を止めるのに必死で、羽交い締め《はがいじめ》のままだということをすっかり忘れていた。

「……ごめん」

キャルがじとーっとした視線を向けてくる。

いくら(一方的にキャルが突っ掛かっていった)ケンカを止めるためとはいえ、女の子相手に羽交い締めはマズかったか。

「フン。結果としてJの真意が聞けるわけだし、許してあげるわ」

「はぁ、どうも……」

何はともあれ、これでケンカはおしまい。

気持ち良く次の段階に進むためにも、ジュードさんの説明を聞かないとな。

「みんな。説明する前に一言、謝らせて欲しい。騙す形になってしまって……本当にすまなかった」

彼は深々と頭を下げた。

この人は自分が悪いと思えば相手がどんな人であろうと関係なく頭を下げ、謝罪できる。

少なくともオレの中では尊敬できる人物だ。

「まぁ、本当のこと言ってくれるなら、それでいいわよ」

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