《MUMEI》

―校外学習の日―

相川君が家の前にいた。


また一緒に学校に行った。そこで相川君が


「こんなこと言いたくなかったけど・・理香ちゃんってマッツのこと好きなんだろ?」

「え?」

「見てたら分かるよ。んで昨日の帰り見ちゃったんだけどマッツと愛佳ちゃん一緒に帰ってた。」

「・・・。」

「愛佳ちゃん達もう付き合っているのかもしれないよ。」

「・・そうなの?私には関係ないよ。悠斗とはただの幼馴染だから。」無理して言った。泣くのを我慢して・・・。

「そっか。早く学校行こう。集合時間に間に合わないよ。」そう言って相川君は笑った。

校外学習で悠斗を見かけても声かけられなくて・・・。

結局何にも聞けなかった。

本当のことをもっと早く聞いておけばよかった。

校外学習が終わって学校からの帰り道、和輝に声をかけられた。

「どうした?」

「え?」

「笑ってなかったから。」昔からいつも私のこと何でもお見通しで・・・。

「そうだった?」

「俺から一つだけ言ってもいい?」

「うん・・・。」

「勝負もしてないのにまだ何にもしてないのに勝手に自分のものって勘違いしてんだってこと

理香が強くないってことくらい知ってるけどせめて笑えよな。」

「・・・。」

「拓から何を言われたのか知らねーけどちゃんと本当のこと聞けばいいじゃん。」

「・・・ぅん。」

「拓は理香を好きだから悠斗にとられるのが悔しくてついたウソかもしれないしな。」

「ありがと、和輝。」

和輝が笑った横顔は少し悲しそうな顔をしていたのは気のせいか・・・。

和輝だったら私のそばにずっといてくれるし私のこと何でも分かってくれるよね・・・

8年前も・・・

「悠斗がどっか行っちゃった。」

「理香は本当に泣き虫だな(笑)。」

そう言ってまだ8歳の小さな体で私を抱きしめてくれた。

暖かくてでもどこか冷たくて・・・。

でも悠斗じゃなきゃ・・・ダメなの。

和輝に家まで送ってもらってから私は悠斗に電話した。

「もしもし、悠斗?」

「リィか・・・。」少し不機嫌な声だった。

「聞きたいことあるんだけど・・・。」

「俺も。リィって和輝と付き合ってるんだよな?」

「え?何言ってんの?」

「拓から聞いた。何か今日とかいろいろ2人で楽しそうにしてたって。」

「そんなことない。こっちだって愛佳と付き合ってるんでしょ。」

「何言ってんだ。リィなんかもう知らない・・・。」

ツーツー

電話が切れた。涙が止まらなくて止まらなくて・・・和輝助けてよ・・・。

そう思った時ちょうど和輝から着信があった。

「和輝ーーー。」私は泣きながら言った。

「どうした?」

全部を話した。

「それ拓がしこんだ嘘だな・・・。」

「そうなの?」

「こんな時に言うのアレなんだけど・・・。」

「うん。」

「俺と付き合ってほしい。理香を悠斗より幸せにする自信あるから。」

「・・・考えさせて。」

きっと昨日の私ならきっぱり悠斗以外考えられないと言ったはずだ。でも今迷ってる。

目の前の幸せをとるか叶わない幸せをとるか・・・。

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