《MUMEI》
裕斗はここで流石に
うつ向いてしまった。
―――俺の中の手がガクガクと震えてだした。
「隆志だけは…俺の事…、普通に見てくれてるって…」
声が震えている。
――甘い、柔らかい声。
耳に入るだけで切なくなる……。
裕斗の言いたい事は分かっている。
この容姿だ、俺だって今まで女の子にしか興味がなかったのにやられ口だ。
――今まで何人かの男が裕斗にいい寄ってきた。
俺はその度にかばって、追い払ってきた…。
「大切にしたい…、
生半可な気持ちじゃない…、分かって裕斗
俺は…、裕斗の心に……心に惚れたんだ…
見た目に惹かれたのも否定しない、だけどそれだけじゃない、俺がそんな男じゃないの…、裕斗なら分かってくれるよね?」
裕斗は再び俺を見つめてきた。
柔らかそうな、ピンクの唇が僅かに、震えている…。
――裕斗はずっと黙ったままだった。
俺達はとりあえず、
店を後にした…。
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