《MUMEI》

誤りの火刑と同時に闇の復権を生きてるまま一時にくぐり通した。ジャンヌダルクすらひと時に一つずつだった。生きたまま火にかかったら生存しない。公然でなければ抹殺されたも同じ。どちらもまた大袈裟だと人はきっと思う。けれどこちらは周知の事どころか多くの人間がその両目で現実に見ていても信じがたくそして恐れおののく。なぜ彼女はそれに耐え切れるのか。なぜ平然な訳などなくても生きていられるのか。誰しも老若男女人間なら絶対に生きたまま存続できるはずがない。全ての人がそう思う。彼女も彼女にしか不可能な事を知ってはいる。人じゃないのだと自覚する。彼女は静かでも畏れ恐れ怖れられているのを自覚している。けれど全てが本当の現実。ありえないけれど彼女の身には実際に起こる。大袈裟どころかそんなもの通り越している事は大勢の他人が彼女以上にその多くの目で知っている。なぜ死よりも非業などんな人間も生きてくぐる事のない現実を彼女の体は耐用できているのか。しかも卑しさ極まりない侮辱で塗り固められた嘘を着せられて。彼女にとって本当にはっきりしているんだ。AはBより重い。100人いたら100人が逆と言うだろう。それは認める。彼女はそこは感覚がおかしいのだろうと自身でも思っている。けれど彼女にとって本当に死より重く大切なのに堪え難く現実社会の目に見えて触り手にする事のできるありとあらゆる事物よりも明らかに重要でなのに恐怖を越えて辛苦で正気なまま生存している意味が皆無なもの。彼女にはそのさらなる苛酷がある。だから耐えきれる訳もないもう一つの現実も否応なく受けてしまう。彼女は彼女自身の為には人生を終えるべきだと知っている。そのAの方がずっと比べる必要もなく重い。生きてる意味も場所もないのにAはBに勝る。そして人権も存在しない。何にもない荒涼とした場所。なのにそれを守って死ぬ。生涯を侮辱され社会から抹殺されるという究極で完全な恐怖。個は多に犠牲とされる。生きている意味などない侮辱される事など許さない略奪されても餌食にされても誇りある死を選ぶと彼女は声明した。彼女にはそれよりも本物の苦渋がある。厳然とした現実よりも身を蝕み亡くしてゆく死しか止める事のできない進行していく今日がある。彼女はずっと死を選んできた。本当に死の中に居続けてきた人間。感情を完全に持たない人型を貫いて実在してきた人間。だから本当を知っている。彼女が生み出している恐怖なのか彼女自身が破壊されているのか彼女ではない力が彼女を殺す権利を行使しているのか。彼女は彼女の存在を完全に消滅してあげる事しかもう彼女自身をも救える方法はなくなる。彼女以外の力を彼女が止められない以上彼女に彼女自身以上の力を持てない以上彼女の中を侵攻し全てを再生しない場所に置き換えてしまう力が行使されるなら彼女にはそれを一人で見ているしかないだろうか。彼女の手も足も脳も心も彼女ではない力の存在を止める事はできない。彼女以外一人しか。2300

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫