《MUMEI》

「ちょっとま――」

キャルを見据えるその眼が語っている……。覆《くつがえ》ることは無いのだと。

「ぐ……っ!」

さっきまでのジュードさんとは思えない他を圧倒するこの迫力。

あのキャルが反論すらできないでいる。

ロッドさんやキアンちゃんにしても身じろぎ一つしない。いや、できないんだ。

「キミはこう言いたいのか? 『人一人の命で世界が救えるならそれも仕方がない』と。忘れるな。その子にも家族がいるんだ。それを失う悲しみがどんなものか……知らないはずはないだろう」

彼の痛烈ともいえる言葉に、もはや反論の余地が無いと項垂《うなだ》れるキャル。

どうやら彼女自身、過去に家族を亡くしていたようだ。

「だけど、こちらの切り札が無くなったワケじゃない」

『融合』以外の切り札があるなんて初耳だが……気休めにしか聞こえない。

「J、そこから先はワタシが。ただ、誤解されたままでいたくないから言わせてもらうけど、ワタシだってこの子を見殺しにする気なんて微塵《みじん》もなかったわ」

「ん。わかってるよ、キャル」

彼女は一つ頷《うなず》くと、オレを睨むように視線を投げつけてきた。

「切り札ってのはアンタのことよ、ケータ」

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