《MUMEI》 アトランティス人の化学技術は天狗丸の想像をはるかに超えていた。 次の瞬間、床と壁、天井 全てが外部モニターと化した機内で、天狗丸は 壮大な雲海の上にいる 自分を発見していた。 暗黒の世界から青空の中へ飛び出した事で言いようのない開放感を感じた。 頭上には下界とは別世界のような眩(まぶ)しい太陽が輝き、足元には暗い色の雲が山脈のように屹立(きつりつ)して広がっている。 雲の中で時折稲光が閃(ひらめ)く。 釣鐘のような形をした ヴィマーナの頂上、透明なドーム状内部で太陽親和水晶が唸りを上げて 回転し、速(すみ)やかに太陽から宇宙エネルギーを補給する。 「パイローチャナ充填(じゅうてん)七十パーセント・・・・八十パーセント・・・・百パーセント。パイローチャナ充填完了しました!」 機内中心を貫く柱内部で 繋がった、二つの水晶(頂上の太陽親和水晶と操縦室中央の水晶)が共鳴して、よりいっそう輝きを増しながら回転し、やがて徐々に勢いが弱まって通常の状態に戻っていく。 「ではまた戦場へ戻るか・・・・」 「待って!白虎」朱雀が突然長い髪を翻(ひるがえ)し白虎のほうへ向いて叫んだ。 「どうした朱雀」白虎がじっと前方を見たまま問う。 「いや・・・・何でもない」朱雀は白い美貌に 苦悩をうかべて唇を噛んでいる。 「これで最後の戦いになるかも知れないな」 前へ |次へ |
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