《MUMEI》
一番恐れていた状況。
逆恨み……って……。
「その事をお知らせに来たんです。もしかしたらマズいんじゃないか…って」
確かに、とてもグッジョブな情報だった。知らない危険より、知っている危険の方がはるかにマシだ。
だけど………。
「ボク達には……、どうすることも出来ないんじゃないか……?」
そうだよ、何も出来ない。
奴らに誘拐や復讐の意識が筒抜けならば、あるいは何か手を打つ事が出来るかもしれない。
だが、そんな事わからない。奴らがどこにいるのかさえ、わからない。
奴らは自由になった。また2年前の悪夢が繰り返されてしまうかもしれない。
止める方法はある?わからない。
わからない。
「……どうする、新斗……?」
「どうするもこうするもあるか……。2年前に一番恐れていた状況じゃないか……」
予想できてたんだ……。
「マズいぞ……。一番マズいのは……逆間だ」
「え?何で?」
「アホか。釈放された誘拐犯の話をするには、2年前の話を1から10まで話さないとダメだ。記憶が混乱する可能性が高い」
「確かにそれはマズい!」
思い出されては困る。何より、この2年間の意味が無い。
「か、考えはあるの……新斗?」
「今はまだ何も言えん……。風影と天草に事情を説明しないとな。秋葉原……いや、今は三谷か。ありがとう、とりあえず警戒する事は出来る」
「……いえ、アタシは伝える事しか出来ませんから……」
呟きながら視線を落とした。
「…じゃあ僕らは戻るけど、あまり気に病まなくてもいいからね」
「ああ、2年前の事件に首突っ込んだボクらも悪いんだからな」
新斗は僕に肘打ちしながら言った。
悪いのは分かってるよ。痛いじゃないか。
「はい、ありがとうございます」
秋葉……いや、三谷さんは頭を深々と下げながら言った。


「あ、戻ってきた」
文化室に入ると、最初に反応したのは美鶴だった。
「何してたの……って、あれ?三谷さんは?ん?秋葉原さんだっけ?」
「三谷ね三谷!」
アホ美鶴っ!もう二度とその名を口にするな……っ!
「お知らせっていうのをボクらに伝えて、小走りで帰ったよ」
「ふ〜ん。内容はなんだったの?」
来た、この質問。
「回避するネタは考えてあるの?新斗」
若干後ろにいた僕は、新斗にコソコソと耳打ちした。
新斗は静かに頷いた。
「私の事を知っているみたいな事を言ってたよね?……会ったことあるのかな?」
……会ってるはずない………よね?

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫