《MUMEI》

彼との同居でペースが狂わされる。
嫉妬……、私が……?


「篠さん……アレックスが泊まるって。」

顔に出さないように出来ただろうか。
今すぐにでも、追い出したかった。
アレックスは人懐っこさから息子ともすぐに仲良くしている。

そうだ、アレックスもジョークを飛ばして親交を深めようとしただ。
まともに受け取ってしまって情けない、冷静になれ。


「シノ、何か寝巻になるようなもの貸してくれないかな。」

ぴちぴちのTシャツを脱ぎながらやってくる。アレックスの鍛え上げている胸板が露になった。


「アレックス!」

アレックスの自由奔放さを彼が制する。


「あ、大丈夫だよ。向こうは俺には見向きもしないし、お互い本命いるから。」

耳打ちしてくる時の嬉しそうな顔……、絶対に面白がっている。


「彼に余計なことは吹き込まないでくれ。」

これでは、アレックスへ肯定しているようなものだ。


「今度、個人的に会おう。ゆっくり二人で話したいな。本当は、シノって可愛いんだね。」

意味深に微笑みかけるアレックスに身の危険を感じた。


「……君は変わった趣味だね。」

やんわりとお断りのつもりだった。


「俺にしなよ。きっと、俺の方が幸せにする。」

アレックスの自信に気圧されそうだ。無理矢理連絡先と時間と場所を指定されたメモを握らされた。

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