《MUMEI》
宣戦布告
 彼らはそれぞれ狂ったように雄叫びをあげ、一斉に走り出した。
その先にあるのは、もちろん市役所。

三人はその様子を確認して、お互い笑みを浮かべた。
「やったね」
ユキナが言う。
「ああ。狙い通り」
「あとは彼らの行動次第、だね?」
「そういうことだ。あいつらにつられて他の生き残りが出て来れば、さらにいいんだけどな」

 頭上では、まだ三人を映しているのだろう、ヘリコプターがうるさく飛んでいる。
「……ったく、うるせえ」
ユウゴは舌打ちをすると、ヘリコプターに向かって中指を突き上げた。
「……誰に宣戦布告してんのよ?」
呆れたようなユキナの声に、ユウゴは笑って答える。
「俺を見てる奴ら、全員に」
「あっそ。知らないよ?あとでどうなっても」
「これ以上、どうなるってんだよ?」
「たしかに」
サトシが笑って頷いた。
そして、三人は視線を合わせると、揃ってヘリコプターに向けて中指を突き出した。
ヘリのカメラはその三人の姿を確実に全国へ流していることだろう。
「よし!俺らも行こう」
ユウゴはそう言うと、梯子を降りた。

 遠く雄叫びが聞こえてくる方向へと三人は急ぐ。
「でもさ、大丈夫かな?」
走りながらユキナが言った。
「何が?」
「人数は集まるかもしれないけど、勝てるかな」
「たしかにあいつら、どんな武器持ってるかわかんないしね」
「んなこと言うなよ。せっかく生き残った奴らをその気にさせたのに」
「そうなんだけどさ。なんか、利用してる気がして……」
「申し訳ないって?この期に及んで何言ってんだ。それに、さっきのだって嘘じゃない。発信機付けられてる奴だっているはずだ」
「そうだよ」
サトシは力強く頷いた。
「殺られる前に殺れ、だよ」
ユキナは「そうだね」と小さく頷き、それきり黙ってしまった。

ユウゴは空を見上げた。
すでに日は暮れかかっている。
いよいよ明日、プロジェクトは終わる。
このまま三人が生き残れることを願いながら、ユウゴは走った。

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