《MUMEI》

「よろしく……」

彼女の格闘センスは抜群で、使用する『ソウル』も体術に有利な速度を高める能力だったはず。

「いっ!?」

――気が付けば二メートルほど後ろに吹っ飛び、尻餅をついていた。

前に出していた左腕が痺れ、徐々に痛みがやってくる。

「ってぇぇ〜……」

偶然にも防いだ形になったが、どこを狙ってきたのか、それすらわからなかった。

「ダメだよぉ〜。ちゃんと『ソウル』出してないと〜」

キアンちゃんが呆《あき》れたような声で話しかけてきている。

「ご、ごめん……キアンちゃん」

戦闘に対する恐怖からか、思うように身体が動かないし頭も働かない。どうやって出してたっけ……?


「ケータくん、まずは落ち着くんだ! 冷静さを失うことは死に繋がる! これは自身との戦いでもあるんだよ!」

そうだ、冷静になるんだ……冷静に……冷静に……――黒い瘴気《しょうき》が全身を覆《おお》いだす。

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