《MUMEI》 2 カクレオニ「一人、死んだわよ」 突然、だった 宛がわれた部屋にて朝食を摂っていた小澤達 その元へ由江がその知らせを持ってきたのは 僅かばかり恐怖の念でも抱いているのか顔色を青くしている由江に だが小澤はさして興味なさげな顔をしてみせる 「……随分と冷静ね。ルールを捻じ曲げた張本人のクセに」 何にも感じる事はないのか、との問いに 小澤は短く別にを返すばかりだ 「そもそも此処は(そういう)場所の筈だ。ヒトが人を(合法)で殺す事が出来る」 「合法?よく言うわ。ここには、法なんてモノ、存在しない」 言い終わると同時に差し向けられる刃物 その切っ先が丁度小澤の喉仏の辺り 薄く皮膚を裂き、細く血を滴らせる 「逃げないのかしら?」 「何で?」 「このままだと私、アンタを刺すわよ」 「出来るもんなら」 やってみろ、とあからさまな挑発 小馬鹿にされ、由江の表情に怒りのソレが顕になる 素早く刃を引くと、それをまた小澤へと差し向け 肩へと突き立てていた 「よく、出来ました」 大量の血を流しながら、それでも嘲笑を浮かべたままの小澤 その笑みは段々と酷く歪んでいって 「……狂ってるわ。アンタ」 まるで痛みを感じていないかの様な小澤の様に 由江は戦き、身を引く あからさまに開いた距離に 小澤は笑う声を上げながらまた詰め寄って行った 「待てってば」 途中、それを遮ってきたのは高宮 正面から小澤を抱きすくめ、その脚を止める 「……ね、奈々。アンタ、気付いてる?」 「何が?」 「アンタの眼も、紅く変わってるって事」 「……そう、変わったの」 まるで他人事の様に呟き、壁に掛けられている鏡を横目見た 見えたのは真紅の眼 ヒトである事を止め、鬼に堕ちた証 「嫌な、色ね」 嫌悪感を顕わに鏡の中の己を睨みつける だが口元には嘲笑を浮かべながら、ゆるり小澤へと向いて直る 「でも、これでアンタを心置きなく殺せるわ」 肩に突き立てたままの刃を態々捩りながら引き抜くと その刃先を小澤の喉元へとまた突きつけた 「……死になさいよ。死んで、償ってよ!!」 そのまま刃を引き抜けば、だが寸前で高宮がその手を弾き 浅くはないが致命傷とまでは言えない程度の傷を小澤の其処へと刻み込んだ 「邪魔しないで!しずる!」 「するに決まってるだろ。こいつは、俺の獲物なんだから」 「そんなの関係ない!だってこいつは、あの人を……!」 高宮へと由江の木が僅かにそれた、その隙を借り 小澤は素早く身を引きながら、唯江の首筋を裏手で打って据える その衝撃で唯絵は瞬間に意識を飛ばし、その場へと倒れ伏す そしてその直後、まるでその時分を見計らったかの様に部屋の戸が叩かれる 「小澤様。どうか、なさいましたか?」 返事を返すよりも先に戸が開き、面をp被った執事がそこに居た 倒れたままの唯江へと視線を落としながら 「……殺したんですか?」 「いや」 気を失っているだけだと顔を背ければ 執事は浅く頭を下げると由江の身体を抱え上げ部屋を辞す ヒトが居なくなれば途端に静けさに支配される室内 痛みに乱れた小澤の呼吸ばかりが其処に聞こえる 「血に塗れてるアンタっていいね。見ると、ゾクゾクする」 肩から多量の血を流し座り込んでしまう小澤 更に乱れていく呼吸に上下を繰り返す肩へ高宮の手が触れ そのまま青の手は肩へと伸び、小澤の膝上へと腰を降ろしていた 流れる血を指先で弄びながら ゆうり、傷口へと指を差し入れ始める 嫌な水音を立てながら押し広げられていく傷口 感じる痛み それはまるで、自分自身に与えられている罰の様で 甘んじてそれを受け入れる 「アンタの中、あったかい」 「……」 「何か、セックスみたい。そんな感じ、しない?」 身体を押し開き中へと入り込む行為 だが其処には甘やかさなど欠片もなく 唯互いに痛めつけるばかりだった 「俺にも、くれよ」 「何を?」 「アンタを、俺の中に」 同じ様に傷つけて押し開いてその中へと求められ 小澤の手へと徐に刃物を握らせる 「何所が、いい?何処から俺の中に入りたい?」 一々厭らしい言い回しに 小澤はソレを煩わしく感じながらも、刃物で高宮の身体のラインをなぞり そしてそのまま着衣を切り裂いた 「……全部、曝せ」 前へ |次へ |
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