《MUMEI》

公平なくじ引きで決まった部屋割りだ、七生も南も何も問題を起こさないことを願うしかない。



「木下君。」
み、南先生……。
そうか、教育実習はまだ二日あるんだ。近付かなくなっていたから忘れてた。

休み時間で空いている隣の七生の席に着く。


「はい。」


「私、鍵渡し忘れてたでしょ。」
掌から小さな鍵が一つ、托された。



「……何の鍵ですか」


「七生のよ」
先生はニッコリ笑った。


「とっくに外しましたよ!」
頭に血が上る。苦労してカッターで引きちぎった。そんなことを手伝わされ俺まで辱められた気分だった。

「あら、そう残念だわ」
反省の色も見せず呑気にため息をつくことに腹が立った。黙って睨みつけてやる。


「貴方に聞きたいことがあるの」


「何ですか」


「七生と付き合ってるの?」

「……違います!」


「でも七生は絶対惚れてるでしょう」
自信ありそうに言う。

その言い回しが詰問されている気分だった。

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