《MUMEI》
黙れ
バンッ!


「〜、はぁ〜もぅ…」


ぜんっぜん連絡つかない秀幸。
いつも遅くなる時は必ずメールか電話してくれるのに今日は全くなんもなくて。

何回メールしたって返信来ないし携帯にかけたって、すぐに留守番電話サービスになっちゃう。


なんか知ってるかもしんない惇にかけたって無視されるしで、俺はなんか不安な気持ちを携帯ぶん投げる事で当たり散らした。


なんとなく携帯がぶつかった壁を見たらクロスが爪の先位剥がれてしまっていて、指でちょっと擦ってみるも、なんともごまかせそうにない。

秀幸はこのマンションに越してからというもの、買ったばかりなんだからやれ汚すな、傷つかねーように扱えとかいちいちウッサイ。



ドンドンドンドンドンドン!!


「馬鹿秀幸ぃっ!早く帰って来ないと壁に落書きするぞっ!あ〜もうムカつくッ!」










「オイッ!いーかげんに起きろ!こんなとこで寝てっと風邪ひくぞっ!」

「…ン〜ひくもん、ひいて秀幸に看病してもらうんだもん」


「も〜い〜から駄目だって、ちょっと起きろ、ベッドで寝ねーと駄目だ馬鹿」


揺すられながら無理矢理意識を戻された。

どうやら俺はいつの間にか床に貼りついて眠っていたみたいだ。瞼を擦りながら掛け時計を見ると、3時をまわっていた。



「もー、運んでくれたっていーのにさー」

俺はテーブルから煙草を掴み、口に咥えた。

「…ワリイ、なんか疲れてて…」



秀幸はざっと着ていたものを脱ぎ捨て、全裸のままクローゼットを開けた。


「風呂入んないの?」


「…ああ、入ってきたから」


秀幸はやたら手際よく、ボクサーを履き、スエットを着込む。


黙って様子を見ていると、秀幸は脱いだ衣類をまとめ、脱衣所に消えた。


そしてすぐに戻ってきて、手元には歯ブラシが握られていて。


「どこ行ってたの?何回もメールしたし、何回もかけたんだけど」


「…あー悪い、疲れたから後でな」


「なんだよそれ、ずっと心配してたのに…」




秀幸は磨きながらまた消えた。



俺は灰皿に煙草を擦りつけ、立ち上がった。





「なあ秀幸、何処で風呂入ったの」


うがいを終え、タオルで口元を拭く秀幸に俺は聞く。


「……」


「なあ!秀幸ッ!」


「…ッサイ…」



「は?」


「裕斗、ちょっと黙れ」

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