《MUMEI》

そして天狗丸とダキニは、火煙りを上げて雲海へ落ちていくヴィマーナの機体を空の一点から見つめていた。
「かわいそうに・・・」
ダキニが口を覆って言えば、
「ま・・・・しゃーないな。人間にしては健闘したほうだろ」
天狗丸がどこかシニカルに言う。
同情はあるが、やはり神一族の視点が混じらざるを得ない。
それは例えば人間が撃ち殺される動物を見て同情するのよりは、多少は共感度は高いかも知れないが、やはり自分達より
下級な種に対する上から目線の混じったものだった。
その眼が一瞬鋭く光り、
「ぬぅ?!」と唸った。
雲間に落ちる寸前、七色の光りを発したヴィマーナが、空間に溶け込むのを見たような気がしたからだ。
天狗丸の傍で浮遊していた光球が、再び天照大神アポロンの美しい姿へ戻ると、「ふん、逃がさん・・・・」皮肉に片頬をつり上げ、ふっと消える。



ヴァーチャル空間の世界がまた地上に戻った。
暗黒の雲が頭上を覆っている。うごめく雲がふとした拍子に厳(いか)めしい髭を生やした老人の顔を形作って、地上を見下ろすと、すぐに崩れて元の暗雲に戻った。
地上には神、妖怪、人間を問わずおびただしい
死体が山となり、相変わらず国津神側、天津神側に別れた勢力が殺しあいを続けている。

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