《MUMEI》
女子生徒
中学時代のある日の放課後。

『えー、うそー!平田が桜子のこと好きだって言ってたの?』

『なにそれー、萌音ずっと平田のこと好きだったのにー』

用事をすませて教室に戻ってきた桜子は

中に入ろうとして自分の名前が聞こえて足を止めた。

『だって桜子、この間平田にノート貸したりしてた……』

そっと中をのぞき見ると

女子生徒が一人、そんなことを言いながら泣いていた。

同じクラスの女子生徒たちが数人、彼女を取り囲んで

なぐさめるように声をかけたり顔をのぞきこんだりしている。

外で本人が聞いているとは思わず、桜子について話し始めた。

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