《MUMEI》
直哉
俺が降りる駅はまだ二駅先だった。




でも隆志が降りる駅で俺は当たり前の様に、下ろされてしまった。





――いや、俺もそれを望んでいたのかも知れない。






俺は肩をきつく抱かれながら、無言で二人歩き続ける。







――胸がドキドキしている。





隆志の事、そんな風に意識した事なかったのに…。





――俺は優しい腕に弱い。




だから直哉の事も受け入れてしまったのかも知れない。






俺は幼い頃から、こんな容姿のせいで、苛められてきた。

肌が白いから気持ち悪がられたり、色々何癖をつけられ、散々差別を受けた。






難儀な嫌がらせも多く、ショックの余り何日も学校に行けなかった事さえ有る。

そんな時俺に手を指し延べたのが直哉だった。



直哉は生徒会役員だったせいもあってか、彼のおかげで中二の時、苛められる人生に終止符が打たれた。





初めて出来た、心を許せる友人だった。





だから、好きだと言われ、躰を求められても拒絶する理由がみつからなかった…。




――でも、直哉が恋人になったと同時に…、大切な友人を失った。





恋人になったから、友人ではなくなったから……。

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