《MUMEI》

一方白虎の後ろでは朱雀が、新たな敵の出現に戦端を開いていた。長い髪を翻(ひるがえ)し、水平に「インドラの火矢」を連射する火線上では、コマのように体を回転させながら、弾着地点の一歩先を黒い塊が移動していくのが見えた。いや正確に言うのなら火線が標的に追いつけないのだ。
「ひゃっはーーっ!」
黒い塊が大地を蹴って空中高く飛び上がると、
墜落したヴィマーナの機体に、
トンッ
と軽く降り立つ。
朱雀を明るい顔で見下ろしているのは、青い色の髪を逆立てた、まだ少年であった。勿論、神一族の年齢を外見で判断するほど、当てにならない事はなかったが・・・・。
少年は外見に似合わぬ好色きわまりない眼で、
朱雀のスーツにフィットする成熟した体のラインをなめ回すように見ると、唇をぺろりと舐め、
「アスラだよーん、よろしくねー!くーっ、一発やりてーっ!!」
場違いに明るい声を上げる。

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