《MUMEI》

「いいけど?」
さして恥じる事も無く、下肢から着衣取り払て行く高宮
全てが顕わになれば、その華奢さに儚気な印象すら覚える
「……細いな。簡単に折れそうだ」
腰に手を回し、引き寄せてやれば、生きているモノの温もりを当然に感じる
近いうちにこの身体からこの温もりを奪う気でいたのだ
ならば今だけは、相手が誰であるかなど忘れて、その温もりに陽立って居たい、と
小澤は高宮の身体を抱きしめていた
「……アンタ、寂しいんだ。ごめんね」
謝罪の言葉など、今更聞きたくはなかった
高宮を恨む気持ちが薄れてしまいそうで
それだけを生きる糧としてきた自分が支えられなくなりそうで
ソレが、堪らなく怖かった
「別に、恐がってもいいと思う。ヒトって、自分の感情に位は素直にならないと」
怖がり、悲しみ、誰かを恨み憎む
その全ては抑え込むよりも認めてしまった方が楽になれるのだから
「な。来いよ、俺の中」
目の前の相手を今だけ見失ってしまえば
このもどかしさから逃れる事が出来るかも、と小澤はゆるり眼を瞑り
まるで縋るかの様に高宮の身体を抱きしめてしまっていた……

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