《MUMEI》 「……皆、自らの欲に従順ね。此処まで派手にやり合ってくれるなんて」 少女により参加者全員に招集が掛けられたのが丁度、日が沈むころだった 執事に促されリビングへと向かえば 各々に皆傷を負い、そして一人掛けた後の五人が其処に揃う 酷く楽しげな様子でその様を眺め見るばかりの少女へ 「……一人目を、殺したのは誰なの?」 やはりそれが気になったのか、問うたのは由江 少女は笑みを浮かべたまま、 傍らの執事へと視線を向ける その視線が意味するもの すぐに全員が、それを理解した 「切欠が必要だと思ったの」 「切欠、ですって……?」 「最初の一人が死ねば、後が殺しやすいでしょう?だから」 「だから、その執事とやらを使って、殺したって言うの?」 「そう。だって、どちらにせよ死んでいたかもしれない人間なのだし」 生きていても仕方がない人間でもあると続け、少女は席を立つ 身を翻し部屋を後にしようとした、次の瞬間 その少女を背後から襲おうとする人影があった 「もう、限界だ。お前は言った何が目的なんだ!?」 気でも触れたかのように喚き始めたのは其処にいた面々の内の一人 眼は赤く充血し、眼尻からは何のそれか、真紅の涙を流しながら 少女へと銃口を向けていた 「……それを聞いて、どうするの?」 間近にある銃口に何の動揺も無癒える様子もなく問う少女 相手は興奮した様子のまま やっていられない、と吐き捨てた 「……事と次第によっては、俺は務所に返らせて貰う」 やっていられない、と吐き捨てた 苛立ちも顕わに身を翻す相手へ 少女は微かに溜息をつき 「……私を、殺せる(鬼)を捜すためよ」 話す事を始める 語られるソレは耳に理解不能なソレで 誰も、何も返せなくなってしまう 「……誰でもいい。早く鬼になってしまいなさい。アンタ達の中には皆、鬼が隠れているのだから」 楽しみだ、と微笑を浮かべ少女は身を翻しその相手よりも部屋を後に 相手は更に苛立ちを募らせると突然に銃を取って出し 誰に向けるでもなく発砲していた 「……殺して、やる。全員」 ソレが、無差別殺人ゲームへと取って変わったソレの始まりの合図 皆の眼が、一斉に真紅のソレへと変わる 殺気が満ちた、次の瞬間 皆が銃口を互いに向け合っていて 小澤は、自身へと向けられている銃口を気に掛ける事はせず 唯その様を眺め見るばかりで 不意に、その腕が引かれた 「……行こ」 引いたのは、高宮 其処から逃げるかのように部屋を出ようとする 「……待ちなさい。しずる」 「……何?奈々」 引き留めてくる由江のソレに脚を止め振り返る 向き直る、なりだった 由江の手に見えたのは、ナイフ 高宮を押しのけたかと思えば、その刃は小澤へと向けられた 「……っ」 激痛を感じたのは一瞬の間の後 刺し抜かれたらしい腹部から、多量の血が流れ始める 「奈々!アンタ、何してくれてんの!?」 「何って、見ればわかるでしょう?この男は、私の仇なの」 小澤の血液が滴る刃物を見せびらか空かの様に高宮へと向けながら 悦に入った笑みを浮かべる由江 まだ足りないのだと言わんばかりに小澤へとまた向いて直った 「……一度じゃ、足りないの。あの人はね、身体の至る処をメッタ刺しにされていたの。だから……!」 小澤にも同じだけの痛みを、と 狂気に染められた憎悪を小澤へと向ける 「……」 「何か、言いなさいよ。痛いって泣いて。苦しいって、喚きなさいよ!」 傷口を抉るように広げられ だが感じる痛みにすらもう慣れてしまっている この痛みさえ感じる事が出来なくなってしまったら ソレこそ自分は人では居られなくなる、と不意に考え 否、最早手遅れなのかもしれない 痛みは段々遠退き、後に残るのは何かが肉を抉っているというその感覚のみ 「ヒトでなくなれば、それが一番楽か」 いっそ、ヒトとしての全ての感覚が無くなってしまえばいい、と 小澤は口元へと自嘲するかの様な笑みを浮かべた 次の、瞬間 「……やめろよ。奈々」 高宮が双方の間に割って入った 由江の眉間へと銃口を押し当て、撃鉄を起こす音を鳴らす 「アンタが、止めるの?……この男の家族を奪ったアンタが!?笑わせないでよ!」 「こいつは俺のなんだよ!俺を憎む全部含めて、俺のなんだ!」 前へ |次へ |
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