《MUMEI》
市役所
 市役所には予想以上の人間が集まっていた。
駅前にいた人数よりもかなり多い。
どこかから合流してきたのだろう。
といっても、せいぜい三十人程度。
微妙な数である。

 彼らはそれぞれ理解不能な叫び声をあげながら、手当たり次第に市役所の窓を割り、中へと駆け込んで行く。
とても理性が働いているようには見えない。
「あいつら、目的わかってんだろうな」
彼らの様子を見ながら、ユウゴは思わず呟いた。
「……正気の人、いるのかしら」
「誘導してみたらいいんじゃない?」
そういうサトシに頷きながら、ユウゴは叫んでみた。
「地下だぞ!奴らは地下にいる!!」
しかし、暴れる彼らに変化はない。
「……なんか、意味ねえ」
「僕たちも行こうか」
「だな。とりあえず、地下室にいる奴らを外にだして……」
「静かに。なんか聞こえる」
ユウゴの言葉を遮ってユキナは建物の中を見つめながら言った。
「なんかって、何が……」
ユウゴが言いかけた時、ボウっと建物の中に火が駆け抜けた。
続けて怒鳴り声が響く。
「あいつらだ」
サトシの緊迫した声が聞こえる。
どうやら、誰かが地下室を発見したらしい。
スーツ姿の男が何人か、狂った参加者に引きずり回されている。
その仲間を助けようとしているのか、他のスーツの者が火炎放射機を振り回しているのだ。

 放たれた火は、カーテンやソファ、残された書類などを巻き込んで勢いよく燃え広がっていく。
煌々と赤く染まる市役所内で、ようやく身の危険を感じた者たちが慌てて走り出てきた。
その中にはスーツを着た者も混じっているようだ。
「わかりやすくていいな」
「スーツ着用が規則なんじゃないかな」
「ま、一応公務員試験だしね」
三人は会話をしながら、走り出し、それぞれに散っていった。

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