《MUMEI》

店長に聞いたら、彼はお店と契約している写真屋の人ではなく、今回の仕事限りだと教えてくれた

「レイラちゃんが他人に興味を示すなんて、めずらしいね
彼のこと気に入っちゃった?」

彼、なかなかかっこ良かったしね?と、40代半ばの店長は興味津々といった感じで人当たりの良い笑顔をアタシに向けた

『まさか、ただ聞いただけですよ』

「なーんだ、本当だったら一肌脱いじゃおうと思ったのに」

本当、お気楽な人

だけど、それは表面上だけ

当時15歳だったアタシをキャバクラ嬢として働かせるなんて、普通じゃない

彼はアタシを金を生み出せると見込んで、年齢問わず雇ったのだ



もう会うことはないんだ

その事実に少しホッとした

たった一言でアタシの心の内に入ってきた彼の存在に少し恐怖を覚えたから

ただ、少し残念とも思ってしまったアタシ自身に驚いた

店長の言うとおり、アタシはあまり他人に興味を示さない

アタシは人間として何かが欠落しているんだと思う

アタシはきっと欠陥品なのだ

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