《MUMEI》 アタシはひとりぼっちなんだと知らされた13歳の夏 アタシは学校の屋上に居た ジリジリと焼けつくような太陽の下 このフェンスを飛び越えて 飛び越えて そしたらお母さんに会えるかな アタシはひとりぼっちじゃなくなるのかな フェンスに手をかけて一歩踏み出そうとした 「うわっ、僕ってラッキー?」 誰も居ないはずだった屋上に明るい声が響いた フェンスに手をかけたまま振り返るとそこには小柄で色白な少年が居た 屋上と屋内を繋ぐ扉の建物の裏側に居た彼は、そこからアタシの正面にやってきた 「学校一の美少女にこんな所で会えるなんてビックリだよ」 その美少女がここから飛び降りようとしてたと知ったら、この少年はどんな顔をするのかな 『誰?』 眉間に皺を寄せて少年に向かって言葉を発した 「僕?」 少年は驚いたように言った 『あんた以外に誰が居るのよ』 「うわ、なんかイメージ違う」 イライラするなぁ この少年の言葉も 焼けつくような太陽も 額を伝う汗も 「ごめん、ごめん、怒らないで 僕はナツ」 アタシのイライラが伝わったのか、彼は降参のポーズをして自分の名前を述べた 「でも、名乗る必要は無かったかな?」 『何でよ?』 アタシはまた眉間に皺を寄せていた 「そんな怖い顔をしないでよ、僕この学校に来るのは今日が最後、転校するんだ」 「だから、最後に君に会えて、こうやって君としゃべれるなんて、僕はラッキーだよ」 そう言って、彼は屋上から去っていった 小さくて、細くて、色白で、今にでも消えてしまいそうな儚げな彼の残像を残して 前へ |次へ |
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