《MUMEI》 ラブコール何と無しに買い忘れをしてしまい、無意識にそのテラスを歩いてしまっていた。 元々計算された銅像が最初からそこに置くべき場所だったように長い手足を組んでいる。 その一目置かざるをえない違和感が悪目立ちだ。 私は見なかったふりをして当初の目的を達成予定であった。 「目が合った。」 アレックスに真っすぐに見られると、逸らせない。 視線と声と肩を握る指で包囲される。 「ここよりは、室内がいいと思う。」 誰もかもが、アレックスの存在感で気付いてしまう。 同じ俳優であるが、アレックスの異質なオーラと彼の調和の取れた馴染み易さは対極にあって、不思議なものである。 「誘っている?」 冗談か本気なのか、悪びれることもない。 「貴方が?」 毒づくと肩を竦めて楽しそうにする。 黒いジャガーが、彼の運転で風を切りながら走った。 「家に来るね。」 何人もの女性を虜にしてきた微笑みで誘い出してくる。 「……何もしないなら。」 「ははっ。一回目のデートではしないよ。」 意味深な言葉を付けてくれた。 「約束するよ、大切にする。」 彼が使う気障な言葉は台本に書かれているようだ。 前へ |次へ |
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