《MUMEI》 羅刹は白虎に休む間を与えるつもりは無いようだった。もし普通の人間が今羅刹と相対したならば、無数の腕を持つ怪物がそれぞれの腕に持った 剣先を、矢継ぎ早に自分に向けて突き出して来るように見えただろう。 だが白虎は歯を食いしばりながら、それらの鋭い突きを剣を縦にし、あるいは横にして弾き返す。 その白虎の剣の腕も非凡な域に達していると言えた。 打ち合う剣は火花を散らす。 羅刹が突きを繰り出しながら、じりっと一歩前へ進む。 白虎が押されるように 一歩後退する。 凄まじい猛撃を受け続けながらも、白虎はチャンスを狙っていた。 プロボクサーがクロスカウンターパンチを狙うように、羅刹が必殺の一撃を放つ瞬間、さらに踏みこんで来る時を待つ。 敵の内懐(うちふところ)に潜り込み、敵の反動を利用した必殺の一撃をお見舞いするのだ。 『気だ!気を読むのだ、白虎!森羅万象あらゆるものに気は宿る。 敵の殺気の流れを読むのだ!さすれば敵が攻撃を放つ前に、相手の剣の 道筋は全て見え、その 攻撃は無効化されるであろう!そこに出来る隙を見つけて反撃するのだ!』 今は亡き人生の師匠であり、剣の師匠でもある 青龍(せいりゅう)の 吠えるような声が、白虎の脳裏に甦(よみが)る。 前へ |次へ |
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