《MUMEI》
恋する気持ち
愛李がマニキュアの小瓶をしまいながら感慨深そうに笑った。

「芹奈もやっと恋愛モードになってきたか。
これで大翔も告りやすくなるねぇ」


正直、大翔のことは全然考えてなかったから、芹奈はとまどった。

「んー……、そうなのかなぁ。まだピンとこないんだよね」


「ま、あんたたち友達期間が長いからまだ自覚ないのかもね」

そう……なにかな。なにか違うような気もする。

なにが違うのかは、うまく言えないけど。

「恋ってどういう気持ちになるものなの?」


みんなに、そんなことを訊ねたのは

本当に自分が大翔に恋をしているのかよくわからなくなってきたからだ。


「んー?たとえば〜」と最初に口を開いたのは翼だった。

いつもは結構すごいことも平気で言うのに

少しはにかむように頬を染めて、可愛い表情で。

「たとえば、その人のことを考えただけで
胸がキュ〜ってなって」


「とにかく切ないよね。意味もなく泣きたくなったり」

「そーそー、胸になにか刺さったみたいに苦しくて
だけど嫌じゃないの」

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